Chapter 10

「S君て、風景だけじゃなくって、人とかって撮らないの?」


「ほら、スタジオでいつもやってるじゃん、モデルさん呼んで撮影会みたいなの」


スタジオでは、月に1回、仕事の後に地元のモデル事務所から女性のモデルさんを何人も呼び、他のスタジオの人とかも参加して、パーティをしながら撮影会みたいな事をやっていて、特に強制的に参加という訳でも無く、手伝えとも言われないので、社長に誘われはするものの、自分は一度も参加した事が無かった。


「別に人を撮るのは嫌いじゃないですけど、あの、妙にハイテンションな雰囲気が苦手で・・・」


「でもさ、キレイなモデルさんとか、いつも夕方からたくさん来てるじゃん。気にならない?」


「見た目だけキレイな人には、あまり興味ないんで・・・」


「KN(兄弟子)なんて、いつもデレデレじゃん。モデルさん達が来た途端に良い人ぶっちゃって、なんか笑えるよね(笑)」


「自分も、急に君付けで名前呼ばれて、ちょっと気持ち悪いですよ(笑)」


「だよね(笑)、よくあんな風にいきなり性格変えられるよ・・・」


「普段は不機嫌そうな顔しかしてませんけどね(笑)」


「あれは地顔だって(笑)」



「でもモデルさん達ってみんなキレイだもんねー。あれはKN(兄弟子)じゃ無くても鼻の下伸びちゃうよね。」


「あのモデルさん達より、KTさんの方が全然美人ですよ・・・」


「お世辞はいいってば(笑)」


「お世辞じゃありませんってば(苦笑)」


「ん? なんか・・・もしかして私のこと口説こうとしてる?(笑)」


「してませんからっ(汗)」


ちょっとドキッとしたけど、そこを突っ込まれる事は無かった。


「フフフっ(笑)、そうだよねー。こんなおばさんなんて相手にしないよね~」



「その・・・自分の事おばさんって言うの、もう止めません?」


「全然そんな風に思ってませんから・・・」



「・・・・解った・・・もう言わない・・・」


「少なくとも自分は、あのモデルさん達にも全然負けてないと思いますよ、ホントに(笑)」


「フフフっ、ありがと(笑)」


モデルの人達は、それなりに美人さんばかりだったけれど、何故か全く惹かれる事は無かった。


でも多分、KTさんとも、こういう関係になってなければ、そこまで惹かれる事は無かったと思う。


学生の頃までは、とにかく見た目が第一なんて思ってたけど、女性の本当の魅力は外見じゃないと、その頃はそんな考え方に変わっていた。



「でも、何も手伝わなくていいんだし、他のスタジオの人達とも仲良くなれるんだから、参加すればいいのに」


「この業界に居座るつもりなんてありませんし、KTさんとこうやって話してる方がずっと楽しいですよ」


「ホントは毎週付き合わされて迷惑なんて思ってるでしょっ?(笑)」


「迷惑すぎて、もう大変ですよ(笑)」


「やっぱりそうかー(苦笑)」


「ウソですって(笑) あ、ちょっと、そんなにイジケないで下さいよ(苦笑)」


「独りにしといて・・・(泣)」


「だからウソですって、もう(笑) 」


「ホントに?(笑)」


「迷惑どころか、楽しくてしょうがないですって(笑)」


「フフフっ、私も楽しくてしょうがないよ(笑)」


なんだか・・・スタジオでの彼女は物凄くクールな感じで、最初に話した時もそんな感じだったけど、二人で話すようになんてから、徐々にちょっと戯けてみたり、子供みたいに拗ねてみたり、急に真面目になったりと、変幻自在過ぎて、どれが本当の彼女の姿なのか、話をすればするほど、よく分からなくなって来た。


でも、そんな会話のひと時が、その時の自分には楽しくて仕方なかった。


ただ、女性は年上でもこんなに可愛いのかと、そこは新鮮な驚きでもあった。

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