Chapter 7
浮気された者同士という事もあって、話をしていると、ついついそれに関連した暗い話になってしまうけれど、でも、ネガティブだった思考も、彼女と話すようになってからは徐々に変わりつつあった。
「KTさんて、どうしてN市に来たんですか? どうせ地元離れるなら東京とかの方が楽しそうなのに」
「んー東京なら友達も何人かいるから行きたかったんだけどね・・・」
「でも、ちょっと遠いから親に許して貰えなくてね。N市ならそんなに遠くないし、よく遊びにも来てたからここでいいかなって」
「たまに友達がN市に来た時は、こっちで会えたりもするしね」
「ふーん、浜松の人って、意外と名古屋に遊びに来るんですかね」
「隣町へ買い物とか遊びに行くみたいな感じだよ(笑)」
「S君はH市に行ったことある?」
「んーそういえば無いですね~。そもそも何があるのかよく知らなくて・・・」
「HN湖以外は何も無いかもね(笑)」
「あ、そんなイメージかも(笑)」
「でしょ?(笑) あとはウナギとかみかんが有名なくらいかな? 」
「うなぎパイ有名ですよね。夜のお菓子でしたっけ?(笑)」
「フフフッ(笑)、それ絶対言われるんだよねー(苦笑) ホントはそういう意味じゃないんだけど(笑)」
「あ、知ってますよ(笑) 夜の一家団欒の時に食べるって意味でしたっけ・・・表向きは(笑)」
「そうそう、表向きはね(笑)」
「でもH市って、S県の中では結構都会で、N市と変わらないくらいに思ってましたけど・・・」
「N市の方が全然都会だってー。H市なんて全然お店無くって、服買うのも困るもん。こっちに引っ越して来てホント便利になったよ」
「ふーん・・・でもよく一人でN市まで引っ越して来て、仕事まで見つけましたよね」
「自分なんてM子と別れてから引っ越すつもりで東京に行ったけど、結局旅行で終わっちゃったし」
「とにかく地元から早く離れたかっただけだから・・・もうここにはいたくない!誰とも会いたくない!なんて感じでさ・・・」
「なんとなく解ります・・・自分も東京に行っちゃって、もう地元にはいない事にしてましたし・・・」
「でも半年もしないうちに人恋しくなって来ちゃってさ、今は逆に友達に電話してばっかりで嫌われてるよ(苦笑)」
「嫌われてはいないと思いますけど(汗)・・・でも、相手が変に気を遣ってくれるのが嫌だったりしますよね」
「そうなんだよね~特に誰々が結婚するとかって、みんな気にして言ってくれないから、仲間内で私だけ知らないとかね・・・」
「結婚が決まった友達も「披露宴には呼ばない方がいい?」なんて、そんな事言われたら「じゃあ祝電は打っとくね」としか言えないじゃんね」
「お互いに気を遣い過ぎて、なんとなくギクシャクしちゃいますよね・・・」
「きっと友達の間でも、私の事色々言われてるんだろうなって思うと、ちょっとやだよね・・・」
「浮気なんて、される方が悪いなんて言う人もいますしね・・・」
「なんか・・・私の人生って、もうホントにボロボロで笑えて来るよ・・・」
「って、なっちゃいますよね・・・浮気した方は大したダメージも無く生きてるのに」
「ねぇ、もうこんな話やめよっ、気持ちが暗くなるだけだし」
「ですね・・・・・でも、それがあったからやりたい事なんでも出来るようになったし、KTさんとも出会えたんで、悪い事ばかりじゃ無いなって・・・」
「フフフっ、そうだね。私もS君と出会えて良かったよ(笑)・・・同じ境遇でも前を見て頑張ってるんだなって、ちょっと希望が湧いて来る・・・」
「いやいや、そこまで頑張ってませんから(笑)・・・やりたい事やってるだけだし」
「そんな事ないよ、そんな風に気持ちを切り替えて前に進めるって凄いと思う」
「恥ずかしいんで、もう話題変えましょう(苦笑)・・・
えっと、夜のお菓子で有名な街でしたっけ?(笑)」
「フフフっ(笑)、今度帰ったら買って来てあげるね」
「あ、いや、今は彼女いないんで・・(笑)」
「だから、違うってば!(笑)」
なんとなく、この出会いは、二人が過去の傷を乗り越える為に必要だったから・・・出会うべくして出会ったような、そんな気がしていたけれど、今考えてみると、本当に奇跡的な出会いだった気がする。
少し前までは、それぞれ全く違う場所で、全然別の人生を歩んでいた筈なのに、様々な偶然が重なって出会い、惹かれ合うように繋がって、気がつくと同じ道を並んで歩いている・・・
縁とは不思議なものだなと・・・
そう考えるようになったのは、多分この頃からだと思う・・・
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