Chapter 4
「あの・・・」
「ん?何?」
「KTさんの事も聞かせてもらっていいですか?」
「え?何の事?」
「間違ってたらアレですけど・・・「私と同じ」って言ってたんで・・ひょっとして似たような経験があるんじゃないかって・・・」
と、その一言で、急に彼女は黙ってしまった・・・
「・・・・・・」
聞かなきゃよかったかも・・と少し後悔・・・
でも、少ししてから・・・
「そうだよね・・・私の事も話さないと不公平だよね・・・」
「あの・・・話したくなかったらいいです・・・多分聞いても何のお役にも立てないし・・・」
「ううん。いいよ・・・」
「もしかして自分と同じような事があったんじゃないかって思っただけで、そんなに・・・」
「鋭いよね・・・そこまでは気付かないかなって思ってたのに・・・」
「スイマセン・・・」
「そこまで読まれてるなら、もうそんなに話す事は無いんだけど・・・」
と、彼女が話し始めたけれど・・・
相手が浮気してたという所は自分と同じ・・・
ただ、彼女の場合は、もう婚約とか式場予約までしていた結婚寸前の所で、彼女の中学時代からの親友とカレが相当前から浮気を続けてたのが発覚して、かなりの修羅場になったらしい。
その女子側の親友が絡んでるところが自分と似ているというか、絡み方は全く逆なんだけど、なんとなく彼女と通じる物をその時に感じた。
「結婚相手と親友を一瞬で失った気分って、どんな気持ちだか、S君に解るかな?」
「ちょっと今想像してますけど・・・男の親友って、そこまで親友って感じじゃ無いんで・・・」
「そうかもね・・・カレの事もそうだけど、女の親友って同性の彼氏みたいな存在なんだよね。だからもう凄いショックで立ち直れないかと思ったよ。」
「カレの事でよく相談とかもしてたのに、それが全部筒抜けになってたなんて、もう信じられないでしょ・・・」
「その二人は最初にどっちから声を掛けたんですかね?」
「その子はA子って言うんだけど、カレとのデートの時にA子も一緒に連れて来てた時が何度かあって、随分前から面識はあったんだけど、最初はカレの方から誘って来たみたい」
「でも親友の彼氏なら、普通は誘われても断るか、怒りますよね」
「ね・・・でも、あんまりこんな事言いたくないんだけど、私と張り合ってた所があったのかなって」
「(結婚で)先を越されて嫉妬してたみたいな?」
「うん・・・それ以外も昔からなんとなくね」
「親友でそんなのあるんですか?」
「親友だから余計あるんだよ、そういうのが」
「そこら辺、男の感覚とちょっと違いますね・・」
「うん・・・そうかもね・・・逆にそういうのに気付いてカレが仕掛けたのかも知れないけど」
「でも・・そんな男だと、そこで浮気が発覚せずにそのまま結婚してたとしても、きっと浮気を続けてたと思うから、その前に分かって良かったですよね」
「そうだね。そんなの想像したくないけど、ホント、浮かれすぎて男見る目が全然なかったなーって、反省してる」
「あ、それは自分も同じ・・・M子は自分の事をずっと好きでいてくれるなんて思い上がってて・・」
「なんか、バカみたいじゃんね。こっちはウキウキで結婚の準備してたのにさ」
「KTさんに比べたら、自分なんてまだマシな方かも知れないですね」
「ダメージとしてはどっちも変わらないと思うよ。私がS君の立場だったらやっぱり凄いショック大きいと思うもん」
「です・・・かね・・・」
「確かに結婚寸前まで行って破局なんて世間的なダメージもあるし、A子と浮気してたってのは流石に参ったけど」
「やっぱりKTさんの方が失ってる物が多い気がします」
「かもね・・・でも、S君の話聞いてたら、私の事も、なんかもうどうでもよくなっちゃったな・・・」
「仲間がいて、ちょっと安心したみたいな?」
「うーん・・・友達とかに話して、みんな可哀想とか酷いとは言ってくれるんだけど、所詮他人事って感じだもんね。」
「一番信頼してた人に裏切られた気持ちなんて、普通の人にはなかなか分かんないだろうけどさ・・・」
「ですよね。なので自分も今まで誰にも話す気にならなかったんで・・・」
「それがいいよ。そんなの話すとどんどん拡がって、自分が恥をかくだけだし。」
「私なんて、友達にも結婚する事自慢してたし、近所の人も結婚するって知ってたからさ、もう恥ずかしくて実家にもあんまり帰りたくないんだよね・・・」
「親はもう気にするなって言ってくれるんだけど、何か悪い事した訳じゃ無いのに、どうして私がこんな惨めな思いをしなきゃいけないんだろ・・・って」
彼女は隣のS県H市の出身で、その破局が原因でA県N市に来たとの事。
その後、元婚約者と元親友がどうなったかは地元の友達に聞いてもあまり分からず、元婚約者は同じ会社だったので会社に知られて遠方へ転勤になったとか、
元親友も友人仲間の反感を買い、地元から離れて雲隠れしてるとか、そんな程度の噂しか聞いていないらしい。
「スイマセン・・・なんか、聞いちゃいけない事を聞いちゃったみたいで・・・」
「ううん、いいよ。多分S君が同じような感じだったら、話してもいいかなって思ってたし・・」
「だから・・・誘ってくれたんですよね?・・・」
「S君の場合は、まずちょっと吐き出させてあげた方がいいかなって・・・」
「だって最近のS君て、すっごい暗い顔してるんだもん(笑)」
「え?そうですか? なるべく感情を表に出さないようにしてたつもりなんですけど」
「そうだね。でも分かる人にしか分からないと思うから、気にしなくてもいいよ」
「いつもネクラですしね(苦笑)」
「そうそう(笑)」
「少しは否定して下さいよ(苦笑)」
「フフフッ(笑)」
と、その後も色々な事を話したけれど、同じ痛みを抱えているのは自分だけじゃないんだと思うと、なんとなく、ずっと沈んでた心がどんどん洗われていくような、そんな感じがした。
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