第32話

「誤解……」



「自分と他人の思いってさ、いつしも合致してるとは限らないでしょ。私の言動が意図しない形で相手に伝わったりもする。本当、生きてるのって心底面倒くさい」



それを聞いて、ますます何をするべきなのかわからなくなった。


ただ、そんな風に考えを至らせながら生き続けるのはきっと、すごく辛い。



「やっぱり、死にたいって思いますか?成美さんも」



思わずそう尋ねてしまった。



「死にたいね。全部片付けて早く死にたい。寿命まで生きるなんてまっぴらごめん」



人生とは一体何なのだろう。私たちが生まれてきた意味は何だったんだろう。


自ら死ぬために生まれてきた命には、一体何の価値があったのだろう。



彼女を苦しめるものが何なのかはわからない。




けれど共通しているのは、死は私たちにとって〝救い〟だということだ。



一般的などこか暗い闇を連想させる死ではなく、私たちにとっての死はその闇を照らす月のようなものだ。

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