第30話

さすがに登校拒否になった時は心配してくれるのかと思いきや、結局は自分の足手まといになる娘を危惧して「長くなるほど登校し辛くなるから」とさっさと学校に戻し、その後たったの一言も心配の言葉すらかけてもらったことはなかった。



私がいなくなったって、両親の生活は今までと何も変わらないんじゃないかと思う。



「みんな、色々問題を背負ってるんですね」



そう呟くと、成美はちらりと私の表情を一瞥してから言った。



「まあ、生きるってそういうことよね」



生きることが何かを背負うことなら、死ぬことは全てから解放されることとイコールなのだろうか。


少なくともそれを期待しているから、私は死にたいと願っているのだけれど。



「なんか、すっきりした顔してるね、あんた」


「そうですか?」



うん、と成美が頷く。



「まあ理由は、なんとなく察しつくけど」



そう言われてドキッとはしたけれど、なぜだか彼女にはバレていても構わないかな、という気になった。



彼女はきっと私たちの計画を知っても止めたりしないのだろう。


死にたきゃ死ねばいい。


彼女はそういう考え方をする人間だから。

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