第27話

「9月1日の登校日、それを俺たちの自殺配信日にしよう」



9月1日。


7月中旬の今から計算すると、あと一ヶ月と少し。


それが自殺を計画する私たちに残された寿命だ。




カナメが徐に立ち上がり私に手を差し伸べる。


少しだけ迷ってその手を握ると、引き寄せるようにして彼が私を立ち上がらせた。




「念のため、もう一回聞くけど。……七海は、本気で死にたいんだよね?」



最終確認するみたいに、カナメが真っ直ぐに私を見つめてきた。



ゴクリ、と息を飲む。


暑いはずなのに、背中から何か冷たいものが這い上がってくるみたいだった。




死にたい。死にたい。死にたい。死にたい?




心の中で何度か唱えてみて、私の答えはやっぱりイエスだった。



こんな学校にいるくらいなら、もう死んでしまった方がいい。


理由は知らないが多分、カナメも死にたい気持ちは同じなのだろう。




一人で死ぬよりも彼が一緒なら、本当に死ぬ勇気が湧くかもしれない。


手首に刻む〝自殺気分〟ではなく、本物の自殺を叶えられるかもしれない。


私はカナメに向けてゆっくりと、深く頷いた。



それをみたカナメが何か決断するみたいに、よし、と小さく呟く。




死を意識した瞬間から、自分の頭の上に死ぬ日までのカウント数が提示されているような気がした。


命はいつだって有限のはずなのに、こんな風に実感したのは初めてだ。




そして私たちは、



自殺配信を行う9月1日に向けて【最期の夏休み計画】を実行することになったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る