第26話

「でもさ、もし今すぐ死ぬとすると、これが最後の夏ってことになるのかぁ」



言われてみればそうだ。


毎年当たり前のように巡っていた季節が、急に意識を持ったように感じられた。



「どうせ死ぬならさ、死ぬ前にしたい事やってからがいいよね」



死ぬ前にしたいこと。


彼の言いたいことは何となくわかった。



確かにどうせ死ぬならやり残したことをやってから死んだほうが後悔もないかもしれない。


しかしそう言われても考えてみても急すぎるせいか、ちっとも浮かんでこない。




「でも、死ぬ前にしたいことって例えば?」


「それはこれから計画すればいいじゃん。夏休みはこれからなんだし」



そう言われて、私は妙に納得させられてしまった。



「だから死ぬのは、この夏休みの終わりでも遅くないんじゃない」



なぜか少し嬉しそうな顔をしているカナメに、私は小さく頷く。

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