第21話

第11話:少年と曼陀羅華 後編


どれくらいの時間が経ったのだろう。

窓を見ると、茜色の空が窓一面に広がっていて、夕日がカーテンの隙間に溢れている。

(もう、夕方だ…)

しばらくして、窓から視線を外す。

机には、母の置いていった茶が寂しく置いてある。

(せっかく持ってきてくれたし、飲もう)

ズズッと音を立てて、1口、飲む。

白茶だ。

ほんのり香りが広がる。

もうほとんど冷めてしまっていて、温かいような、冷たいような感覚が、喉を伝う。

ぐぅぅぅ。

何かと思えば、自分のお腹の音だった。

良し、ご飯を食べに行こう。

立ち上がった時。クラり。

一瞬、目眩のような感覚が襲った。

(………?)

何だか、さっきからふわふわする。

意識がはっきりしない。

バンッ

大きな音を立てて、アイツが入ってきた。

(あ…また、殴られる…?別に少し待てば終わる…。いや、今こんな状態で殴られたら、まずい。)

こんなフラフラな状態で、いつもの様に殴られては命が危うい。

抵抗もできるかどうか…

アイツはズンズンと俺の所に来る。

殴られるっっ!!!

反射的に、手を顔の前に被せる。

ドンッッッ

アイツの手は、俺の両肩を突き飛ばした。

(………は?)

驚きとはっきりしない意識で受け身を取れなかった。

全てがスローモーションの映像の様に見える。

ばあちゃんの顔が浮かぶ。

何時ものニコニコ笑う顔。

走馬灯だ…。

俺はそのまま床に落ちていく。

ガンッッと、俺の後ろにあるタンスの角に頭がぶつかる。

鈍い痛みと共に、俺の意識は途絶えていく。

アイツの真顔の顔を最後に、遂に俺の意識は途絶えた。

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