第14話

エピローグ


悪い夢から覚めたように、後味の悪い気持ち悪い感覚で我に返った。

パッと視線を上げると、そこはカフェだった。

…夢から覚めたのだろうか。

でも夢、と言うより走馬灯のような、昔の記憶を思い出しているような、そんな感覚だった。

皿は空だった。

すべて食べたのか…。

いつの間に…と思いながら、しばらくぼうっとする。

そりゃ仕方ない。

あんな自分の壮絶な過去を知ったのだから。

「体調は大丈夫ですか?…顔が青ざめていらっしゃるように見えて。」

パッと声のする方を向くと、横に黄泉さんが立っていた。

「いえ、大丈夫です」と言いつつ、まだ少し気持ち悪かった。

「…これ、どうぞ。少しは気分良くなると思いますよ。」

前には、1人の少年が立っていた。

淡い金色の髪を白のパーカーで被せた少年は、月と言うらしい。

もう1人、同じ格好をした少年は陽と言う、と黄泉さんが教えてくれた。

双子らしいが、良く喧嘩するので困っている、と話していた。

数秒笑いあって、ようやく月くん(さん?)が持ってきたものに目を通す。

それはーーチョコ、だった。

なんの偶然だろうか。

「ストレスや、体調が優れない時に良いチョコなんですよ」

なので、とチョコを勧めてくる。

「いただきます」

好意に甘えて、ありがたくいただく。

1口サイズの食べやすいチョコは、ミルクチョコのように甘かった。

スーッと気持ち悪い感覚が消えていく。

魔法のようだ、と思った。

「…すべて思い出したようですし、もうここにいる必要はありませんね。ドアから出れば、今度は閻魔様の元に行けます。…元々ここは、閻魔様の所までの停留所ようなものですから。どうぞ、お気を付けて。」

少女はふわり、と笑った。

少女が説明してくれた。

紫色のアンティーク風のドア。

彼処はまた、黄泉路に続いている。

あの暗闇に包まれた、道かも分からない道。

少し、足が震えた。

閻魔はどんな人なんだろう。

昔、絵本で読んだ閻魔の顔を思い出す。

あんな怖い人なのだろうか。

分からない、俺には。

ドアノブに手をかける。

フッとドアに手をかけた俺の後ろに、人の気配を感じる。

バット振り返ると、あの二人、宵間と茅野がいる気がした。

現実は黄泉さんと月、陽が立っている。

そんなわけはないと分かっている。

だから、ドアを開ける。

「初恋はほろ苦がったな…」

口に広がった気がした。

あの初々しくて、でも、裏に恐怖がある後味が。

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