第32話
「あ、いや・・・ちょっと勘違いして」
まずい、と慌てて曖昧な回答をする私に、彼は特に追求する事もなく眉を寄せて苦笑するだけだった。
「そっか。…でも俺とタメで、母さんと同じ名前の人と”今日”知り合うって、…これもなんかの縁なのかな」
その時、ふいに彼の表情が曇ったような気がした。
実際の過去でも彼はこんな表情を浮かべていたのだろうか。
今となってはあの日の彼の表情までを鮮明に思い出す事は出来なかった。
しかしそれはほんの一瞬だけで、それから彼は少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら
「突然であれなんだけど、…よかったら俺と友達になってくれないですか?」
と私に言ったのだった。
……そうだった。
この日彼はそう言って、この日限りになるはずだった2人の縁を未来へと繋いでくれたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます