第26話
私は辺りをもう一度見回し、近くにあった交番に駆け込んだ。
「あの、すみません」
中で何やら書類のような物を記入していた警察官がその声に顔をあげた。
「どうされました?」
そう聞かれて、私は一体何と尋ねればいいのかわからなかった。
“ここは過去ですか?” なんて聞く訳にはいくまい。
「あの・・・今日って何日ですか?」
「え、今日?」
そう言って警官は壁に下げているカレンダーで確認してから
「4月16日ですよ」と言った。
「・・・えっと何年でしたっけ?」
「今年は2009年ですよ。どうかされたんですか?」
「2015年ではないですよね・・・?」
「え、2015年?」
今の今まで快く答えてくれていた警官の目つきが急に疑わしげに変わったのがわかった。
「あ、何でもないんです!失礼しました!」
私は慌てて逃げるように交番から離れた。
駅から迎賓館の方に走っていき、迎賓館の大きな白い門の前辺りでまた足を止めた。
一般公開中であるはずにも関わらず、門はしまっており、近くにも、もちろん中にも人はいない。
「・・・どうしよう」
私はうなだれるように門に背中を預けた。
これは夢なのだろうか。
けれど夢とするにはあまりにもリアリティーがありすぎる。
もし夢ならば、夢だと疑った端からどんどん覚めていくものだ。
けれど意識ははっきりとしていて、漫画のようにほっぺたをつねってみてもただ痛いだけだった。
本当にここが2009年なのだとすると私が高校3年生の頃の過去だという事になる。
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