第8話
私は再び招待状に目を落とす。
「榛野、幸せなんだ・・・」
他人の不幸を願う訳じゃないけれど、なぜ今のこのタイミングで送ってくるんだと、理不尽な感情を持て余しているのが本音だった。
そんな事、榛野に当たっても仕方ないのだけど、私も一紀と大学2年の頃から3年も付き合っていれば結婚を意識しなかったわけではない。
彼は4歳年上だったし、私が今の就職先であり、大学時代初めてのバイト先でもあるアパレル店で彼と出会った頃、彼は既に正社員で、時々会話の中でそんな話も出ていた。
けれど私はいつも彼に対してどこか冷めたような客観的な態度で接していたと思う。
今日みたいな浮気現場に遭遇したのはさすがに初めてだったけれど、これまでにも何度か浮気まがいな事はなかったわけではないし、それでも彼に対して怒りや、嫉妬というような感情を抱いた事は今まで1度だってなかった。
怒りよりも先に、諦めや、めんどくさいといった感情が勝ってしまう。
これは彼のせいなどではなく、私自身の問題だ。
きっとこの感覚はこの先、誰と付き合っても変わらないのだと思う。
——私が恋愛にのめり込むことができなくなったのは、いつからだっただろうか。
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