第4話

代金を支払いタクシーを降りると、ポツポツと空が私の代わりに泣いていた。




私は23年間住み慣れた実家の自分の部屋へと急いだ。


肩からかけていたバッグを机の上に放り出してベッドに倒れ込む。



その拍子にベッド脇のゴミ箱に足を引っ掛け、ゴミ箱の中身がラグマットの上に散乱する。



「・・・最悪」



なぜこういう日はなにもかもがうまくいかないのだろう。




今日は仕事でも散々だった。


私が店長として働いているアパレル店で私をよく思っていないマネージャーがわざわざ嫌みを言いにやってきて、私はトイレに駆け込み一人で自己嫌悪に暮れていた。



スタッフはフォローしてくれたけれど、あのマネージャーが私の上についてからは楽しかった職場も毎日気が重くてそれが売り上げにも影響し始めているのも事実だった。



こんなに気持ちが弱いのなら接客業なんて向いていないのかもしれない。



いっそ転職してしまおうかなどと悩みに悩んで今日はその相談にのってもらおうと約束もしていないのに一紀の家まで行ってしまったのだ。

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