第2話
私は静かに靴を脱ぎ、そっと扉の前までいくと恐る恐るその扉に手をかけた。
その場で一度大きく深呼吸をする。
ゆっくりとノブをひねり開ける視界の先で、まず細い足がベッドから伸びているのが見えた。
さらにそれに絡めるように毛深い彼の足が無防備に投げ出されている。
事の後なのか、2人は布団もかけずに生まれたままの姿でベッドの上で抱き合い寝息をたてていた。
さっきまで彼を庇うように頭の中を駆け巡っていた様々な空想は、一目にしてあっという間に打ち砕かれ、体中の血が引いていくのがわかった。
・・・ただ、それは彼に対しての絶望ではなかった。
見てはいけないものを見てしまった、見なければもう少し長く得られた彼という居場所を自ら奪ってしまった自分への失望だった。
けれどその状況を目の前にしても、私は怒りの感情どころか涙も出なかった。
———涙など、もう何年も流していない。
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