第一章 元カレからの手紙

第1話

1【元カレからの手紙】




見た事のない、赤いハイヒールだった。




今日はここに来る予定ではなかったのだから、余計な事をせずそのまま自分の家に帰っていればよかったのだ。


丁寧に揃えられたそのハイヒールの隣で、一紀かずのりのスニーカーまでつま先をきっちりとこちらに向けて並べられている。



めまいがした。



まるで尖ったヒールのつま先から銃口を向けられているような緊迫感がこの狭い玄関に漂っている。



こんな事になるならば、来なければよかった。


なぜ来てしまったのだろう。



でも今日は、どうしても一人になりたくない理由があったのだ。




だからせめて今日だけは、誠実な彼でいてほしかった。



もしかしたら地方にいる彼のお母さんが急に上京してきたのかも、それか家の中まで上がり込む強引なセールスレディが来たのかもしれない。

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