第23話

「……」



何と返せばいいのか分からなくなった都古は、伊吹が破片を集めているカチャカチャという音を黙ったまま聞くことしか出来ない。



ここで彼を煽るようなことを言ってしまえば、きっと彼は動揺して今度こそケガをしてしまいそうだから。



仕方なく、都古は元いた場所にぺたんと座り直す。



「……さて、と」



掃除機までかけ終えた伊吹は、再びお茶の用意を再開して、



「……なるべくミヤを傷付けないで済む方法を模索中だから……もう少し待って欲しい」



都古の目の前に湯気の立つ湯呑みを置いた伊吹は、彼女から顔を背けながらそんなことを言い放って、



「模索中、って……?」



誰か他の女の子に協力を求めているのではと不安になった都古が、慌てて伊吹の顔を覗き込んだ。



「えっと……右京さんとか、そういうの上手そうだし、それとなく聞けないかなって、様子をうかがってて……」



「えっ? 待って。普通、そういうのって彼女のお兄ちゃんに聞いちゃうものなの?」



別に都古は兄のテクニックなんざ知りたくもないし、伊吹との進展を兄に把握されるのも嫌だ。



「普通は……仲のいい友達とかいれば、そういう相談とか出来るんだろうけど……僕、普通じゃないし」



「あ……」



都古のことを“大切な恋人であり、幼なじみであり、親友である”と思っている伊吹にとって、他に気を許せる人間なんて限られている。

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