第22話

「……」



求めてくれているように見えたのに。



都古だって、受け入れる意思を見せているのに。



それなのに、どうしてやめてしまうのか。



「イブくん」



悲しくて俯いた姿勢のまま、床に敷かれたラグを見るともなく見ていた都古がぽつりと呼ぶと、



「うん?」



キッチンでお茶のおかわりの用意をしている伊吹が返事をしてくれた。



「私って……途中で萎えちゃうくらい、魅力ない?」



「……っ!?」



――ガシャンッ!



都古の言葉に驚いた伊吹が手を滑らせ、湯呑みを床に落として割ってしまった。



「イブくん!? ケガしてない!? 大丈夫!?」



都古が慌てて立ち上がり、



「来ちゃダメ! 危ないから!」



伊吹が鋭く叫んでそれを制止する。



「ケガも火傷もしてないから、平気。ごめんね、びっくりさせて」



都古の立っている位置からでは、しゃがんで湯呑みの破片の後片付けをしている伊吹の表情は見えないが、



「……こんなことになっても僕は今でも全く萎えてないし、ミヤは本当に魅力的な女の子だよ」



ぼそりと呟くように、先程の質問の答えをくれた彼の声は、心なしか震えているような気がした。



「自分で自分を抑えられなくなりそうで、そうなった時にミヤを傷付けるんじゃないかって……それが凄く怖いんだ」

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