第19話

いつも通りに伊吹の部屋にお邪魔させてもらった都古は、



「はい、どうぞ」



「あ、ありがとう」



彼にお茶とお菓子を振る舞われ、ローテーブルの前にちょこんと正座した。



温かいほうじ茶をすすりながら、



「ねぇ、イブくん」



「うん?」



都古は、自分の正面に向かい合って座り、美味しそうにほうじ茶をすする伊吹の顔をじっと見つめる。



「イブくんがよく言ってくれてる、“ミヤさえいれば”って……あれって――」



「そのままの意味だよ。僕はミヤしか欲しくないからね」



そんなことをさらりと言うクセに、



「でもここ一ヶ月くらい、イブくん私に何にも求めてこないよね」



「……」



関係が深くなるどころか、どんどん都古に触れなくなっていった伊吹は、最近ではキスすらもしなくなっていた。



「……そういうことをしたいがためにミヤと付き合ってるってわけじゃないから」



体目当てではない、と言っているつもりなのだろうか。



けれど都古としては、



「好きな人となら触れ合いたいって思うのって、男の子でも女の子でも同じじゃないの?」



大好きな伊吹からの愛情表現なら、いっぱいされたいと思っているのに。

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