第16話

「今日、イブくん家にお邪魔させて欲しいって言ったら困る?」



進級したわけだし、もしかすると彼のおばあちゃんがお祝いに来るかもしれないな……と都古が考えながら彼の目を下から覗き込むと、



「ううん。是非来て欲しい」



伊吹の青みがかった緑色の瞳のきらめきが、少しだけ強くなったような気がした。



「はぁ、やれやれ。お邪魔虫な風香様は、お先に失礼するとしましょうか」



空気を素早く読んだ風香が、二人に手を振りながら先に教室を出て、



「私たちも帰ろっか、イブくん」



「うん」



少し元気が出てきた伊吹を引き連れて、都古も帰路につく。



彼の自宅までの道中で、



「で、どうしたの? 何か嫌なことあったの?」



都古がそう訊ねると、



「……」



伊吹はしゅんと俯いて、彼女と繋いだ手に少しだけ力を込めた。



「……僕と友達になりたいって人なんか、いないかもしれない」



無意識に零れたその言葉で、



「えっ?」



今朝の自分の軽率な発言が、彼を傷付けたのかもしれないと気付く。



「男子はすぐに、僕がミヤとどんな関係なのかを聞きたがるし、女子は多分、違う目的で僕と仲良くなりたいんだろうなって察しがつくし」

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