第8話

「えっ。なになに、私?」



風香が嬉しそうに自分の顔を指差し、



「愛しいミヤの大切なお友達だとは思っていましたけど、南先輩って僕にとって何なんでしょうか」



伊吹は難しそうな顔をする。



「……よくからかってくる鬱陶うっとうしい先輩、とか」



「おい。こんな可愛らしい先輩に向かって鬱陶しいとは失礼でしょ」



「顔は別に関係ないです」



校内一の美人と名高い都古に対し風香は校内一可愛いと言われているのだが、伊吹からの扱いは淡々としたもので、それを新鮮に感じつつも、



「ホントーにこの子、後輩のクセして可愛くない!」



親友の彼氏といえど小憎たらしく見えて仕方ない。



きっと都古が彼女に嫉妬せずに過ごせているのも、二人のこの雑な会話のせいなのだろう。



……それが二人から都古への気遣いによるものなのか天然ものなのかは不明だが(おそらく後者)。



嫉妬といえば、都古が伊吹と付き合い始めた頃、彼がこうして都古のところへやって来る度に、



「中等部って……あんな子供をよくそういう相手として見られるわよね」



と陰口を叩かれていたのも知っていたし、彼が悪く言われるのももちろん許せなかったが、



「わっ。朝倉くん、また更に背が伸びてイケメンに磨きがかかってきたわね」



彼に対し急に色目を使うようになった女子が増えたのが、もっと嫌だと思うようになった。

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