第31話

右京からは絶対に反対されるとばかり思っていただけに、その右京からのまさかの後押しには俊も戸惑う。



「え……えぇー……都古ちゃん、本当に俺で大丈夫なの? 俺、彼女いない歴と実年齢一緒だよ!?」



都古に初めての彼氏が出来たのは小学生の頃だと聞いていたし、その彼と別れた後も、常に誰かしら恋人がいたことも俊は知っている。



恋愛初心者な俊には、都古のような恋愛経験の豊富な女の子と上手く付き合えるのか自信がない。



「俊さんがいいって、何度言わせるつもり? あんまり意地悪しないで!」



うるうる目の都古にじっと見つめられ、



「うっ……」



「お前、都古にばっかり告白させて、お前は何もしないつもりか」



親友からはゴミを見るような目で見下ろされ、



「うぅ……」



俊は思わず項垂れた。



「えっと……後悔しない?」



ちらりと都古の方を見ると、



「都古が嫌だと思ったら振ればいいだけの話だろ」



都古ではなく、何故か右京が即答。



「俺が捨てられるの前提なの!?」



俊が慌てて後ろの右京を振り返り、



むしろ、お前が都古に対して酷い振り方をしたら覚えてろよ?」



恐ろしく冷たい眼差しで見下ろされ、



「ひえぇぇ……」



俊は恐怖で縮み上がった。



「ちょっとお兄ちゃん! 俊さんの正直な気持ちを知りたいのに、脅さないでよ!」



都古が慌てて二人の間に割って入る。

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