第28話
「……まだ好きなの?」
もう一度、都古の口から紡がれた質問に、
「いやっ、あの……みくたんに関しては好きっていうより推してるっていうか……アイドルに憧れてる感覚に近いかも」
俊は慌てて言葉を探した。
――そう。
俊の美紅に対する気持ちが本当の恋ではないことに、俊自身もとっくに気付いていた。
けれど、だからといって、本物の恋愛感情がどんなものなのか、それはまだ体感出来ないでいる。
「私じゃダメなの?」
「ダメなんかじゃないよ……俺にとってはね」
寂しそうな声で呟いた俊の意図が理解出来ず、都古がその目を真っ直ぐに覗き込んでくる。
その綺麗な蒼い瞳を見て、もう嘘はつけないなと観念した俊が、
「都古ちゃんにとっては、俺ではダメだと思う」
今度ははっきりと断言した。
「今の研修が無事に終わったら、俺は消防士として働くから。そうなったら俺は都古ちゃんのことよりも出場命令を優先するし、危ない現場にも行かなきゃならない……都古ちゃんには俺のことでいっぱい心配させて、いっぱい悲しませるかもしれない」
「そんなの……私を振る理由にはならないわ」
まだ高校生の都古には、『嫌い』や『他に好きな人がいる』などの理由でない限り、納得は出来ない。
『~かもしれない』なんて、まだ実際に起こってすらもいない未来の話なんかされたって、想像すら出来ない。
お互いに好きな気持ちさえあれば、それだけでいいと思っているのに。
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