第27話
「美紅ちゃんオススメの、塩味とキャラメル味のミルフィーユ食いしたい」
都古は、兄の婚約者から聞いた『ミルフィーユ食い』という奥義――しょっぱいものと甘いものを交互に、という食べ方がお気に入りのようで、その食べ方を知って以来、ポップコーンを食べる時は必ずそうするようにしている。
「いいぞ。好きなの注文しろ」
「やったー!」
きっと空元気なのだろうが、それでも楽しそうに振る舞う都古と、それを優しい眼差しで見守る右京を見て、
(やっぱり俺は……都古ちゃんを傷付けずに守る方法を知らないから。彼女と一緒にいていいのは、俺じゃない)
いつまでも彼女の好意に酔っていてはいけないと痛感した。
黙ったままの俊を、右京が見かねて、
「トイレ行ってくる」
非常に不自然なタイミングでそんなことを言い放ち、席を立つ。
「えっ」
困惑する俊と、
「……」
自分の膝の上でスカートを握り締める両手を、口を真一文字に結んで俯き気味に見つめる都古の二人だけが残された。
「あ、あの、都古ちゃ――」
「俊さんは、まだ美紅ちゃんのことが好き?」
何か言いかけた俊を、都古が遮った。
ここでやっと顔を上げた都古の瞳が、涙でうるうると潤んでいて、
「……っ」
俊が言葉に詰まる。
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