第5話
諦めないと言われても、そもそも彼がどこの誰なのかも知らないし、知りたいとも思わないのに。
高等部の昇降口に逃げ込み、急いで上履きへと履き替えていると、
「美少女って大変だねぇ、ミヤちゃん」
後ろから誰かに声をかけられた。
「あ、ふーちゃん。おはよー」
都古が振り返ると、そこには同じクラスの女子生徒・
彼女とは、小学一年生の頃からの大親友。
都古がわざわざ中学受験を受けてまでこの中高一貫校に通うようになったのも、彼女の影響が大きかったりする。
彼女と離れ離れになりたくない、というのももちろんだが、彼女の目指したこの学校には、本格的なお茶室があったから。
都古の母親は茶道の講師をしていて、都古自身も小さい頃から茶道を
茶道自体は都古も好きだったし、部活動も入部するなら茶道部と決めていた。
だから、風香とお茶室目当てで入学したと言っても過言ではない程。
……まぁ、受験を決意した時点では、まさか自分がそこでイジメにあって、そのイジメっ子たちと六年間を同じ建物内で過ごすハメになるとは予想もしていなかったのだが。
そういう意味ではこのエスカレーター式というシステムはなかなかに辛い。
風香の存在だけが、唯一の癒しだ。
というのも、
「ふわふわのうさぎ系美少女なふーちゃんに言われてもね」
風香も、この学校内では知らない者はいない程、美少女として有名だから。
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