第31話
自分から右京の心を奪った女の顔を、もう一度しっかりと確認したいと思った恵愛は、右京と別れて一人で歩いている彼女にバレないようにサッと追い抜いた。
そして反対の方向へ向き直り、彼女とすれ違うフリをして正面からその顔をしっかりと見る。
……まるで、儚くも可憐な桜の花を思い浮かべてしまうような、可愛いとしか表現しようがないその容姿に、
「……っ!」
恵愛はついに我慢が出来なくなり、何も知らずにこちらへ向かって歩いてくる彼女を……
今までの恨みと渾身の力を両手に込めて、すれ違いざまに思い切り突き飛ばした。
その直後、
「きゃっ!」
バランスを崩し、膝を擦りむきながら地面に倒れる彼女の悲鳴と、
――プツンッ……!
恵愛の胸のボタンがまたしても弾ける音が重なって聞こえた。
恵愛が慌てて自分の胸元を見下ろすと、案の定、豊満すぎる谷間が大きく露出していて、ハッとして顔を上げれば、周囲の知らない男たちが全員立ち止まって、倒れた美紅ではなく恵愛の胸を凝視している。
「やだ! 見ないで!」
いくら、今まで多くの男たちに触られてきたと言っても……大嫌いな男共にタダでジロジロと見られまくるのは、恵愛だって絶対に嫌だった。
慌てて両手で胸を押さえ、その場にしゃがみ込む。
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