第29話

実際に彼女を見たという飯田の感想によると、彼から見てもその間宮 美紅という少女はとにかく可愛いらしい。



「俺は清楚系で可愛いあの子よりも、超絶美人でエロい雰囲気全開の川上が好きだけどな!」



「……」



……そんなフォローにすらなっていないフォローもついでにもらったが、恵愛には正直、飯田の好みなんてどうでもいい。



欲しいのは右京からの興味と愛情だけなのだから。



そしてそれ以降も、飯田を使って右京と美紅という少女の情報を集めさせた。



あの右京にこれだけはっきりとアピールされているのだから、この美紅という少女が彼に落ちるのもすぐ――いや、もう既に落ちているだろうと思っていたのに……



飯田には探偵の素質でもあるのか、これまた優秀な働きを見せてくれた彼が新たに持ち帰った情報は、『間宮 美紅には他に想い人がいるらしい』というものだった。



恵愛が恋焦がれて仕方がないのは右京なのに、その右京は美紅という少女を強く想っていて……そして美紅は、全く関係のない別の男に想いを寄せている。



そして恵愛は、どうでもいい男たちから体ばかりを求められる日々。



この横恋慕の連鎖のような、負の関係性は一体何なのか。



自分も右京も、なんだかとても滑稽こっけいに見えて情けなくなり、思わず涙を零してしまうと、



「川上には、俺がついてるからな!」



何の励ましにもならない存在の飯田が、恵愛をきつく抱き締めてきた。

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