第27話

ベッドのある自室で、彼にお茶とお菓子を適当に振る舞いながら、



「でも、離れてる間のことなんて本当かどうか分かんないしー……私が飯田くんのこと安心して寄り添えるようになるまで、行動で示してくれないかなぁ?」



恵愛は妖艶に微笑んで見せた。



自力で情報を嗅ぎ回るより、右京の傍にいやすい飯田コイツを使った方が効率的だと考えたのだ。



「行動?」



「私が右京くんと付き合ってるって噂は本当なんだけどね。私、彼に大事に想われてないみたいで」



「なっ……」



「彼が本当は誰に夢中になってるのか、真相が知りたいの。それをこの目で確かめないと、私……このままじゃ、右京くんのことを忘れて次の恋に進める自信が全くないの」



はらはらと涙を流し、それを右手の指先でそっと押さえて見せると、飯田はギリッと奥歯を噛み締める。



「市川のヤツ、川上さん相手に何てことを……!」



膝の上でつくられた飯田の握り拳の上に、恵愛がそっと右手を重ねて置いて、



「私のこの寂しさを埋めてくれるのは……頼れるのは、飯田くんだけなんだよ」



すぐ傍にある、自分のベッドへと彼をいざなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る