第26話

「あぁ。別に平気だ」



そう答えた右京は、恵愛の気のせいでなければ、とても機嫌が良さそうに見えた。



この日はいつも通りに愛し合って、それから――



この日を境に、恵愛から右京をデートに誘っても、断られる日が明らかに増えていった。



恵愛の自宅へ来てくれる日も、週に一度は必ずあったのに、月に一回程度にまで減った。



これは絶対に何かあったに違いない。



そう思った恵愛は、学校の帰りに、右京の通う檸檬高の前でこっそりと待ち伏せて――



その時に、偶然恵愛のことを見つけた元クラスメイトの男子に声をかけられた。



飯田いいだというその男子は、一年生の時に同じクラスになった当初から、恵愛に好意を寄せているのが丸分かりな生徒で。



今も、恵愛に対して恋心を抱いているのは明らかだった。



右京との噂があるのは知っているが、自分の方が恵愛のことを愛しているから付き合って欲しいと告白してきた飯田に、



「そんなに私のこと、ずーっと好きでいてくれたんだぁ? 嬉しいなぁ」



飯田これは利用価値があるのかもしれないと考えた恵愛は、継父やパパに向けるのと同じ営業スマイルをニコニコと浮かべて、彼の手を両手できゅっと握る。



このままここで話すと右京に見られて危険だと思った恵愛は、飯田を自宅へと誘い込み、そこで話を進めることに。

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