第27話
一年生の出し物は午前中で終了したので、各々で昼食を済ませた後は、文化部の出し物を自由に見て回る。
美紅と右京は予定していた通り、天野・村田カップルと共に茶道部のお茶会へ。
美紅が行くと聞いて本当は相原も激しく行きたがったのだが、彼は抹茶が苦手らしく、大泣きしながら参加を辞退した。
茶道部の畳張りの部室で、浴衣をまとった部員たちが目の前で抹茶を
「わぁ、綺麗!」
美しい練り切りと見事な出来の茶碗に見惚れた美紅が、ブレザーのポケットから取り出したスマホで写真をパシャリ。
「……可愛い」
そして、そんな美紅を愛おしそうな目で見つめていた右京が、不意にブレザーのポケットから取り出したスマホで記念にパシャリ。
「右京くん、今何撮ったの?」
目の前のお抹茶セットに夢中になっていた美紅は、彼が自分にスマホを向けていたことには気付いておらず、
「この和菓子撮ってた」
右京はさらりと嘘をついた。
(右京先輩、そういう嘘はつけるんだ……)
美紅の隣で誰よりも早く練り切りにかじりついていた天野は、右京の行いの一部始終を見ていたのだが、今日はもう余計なことは言わないでおこうと、貝になることを決めた。
そんな彼女を横目で眺めていた村田は、
(……ま、市川のこと怒らせたばっかりだもんな)
彼女のその判断は正しい、と心の中で激しく頷いたのだった。
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