第50話

フェリーが出入りする港の近くにある倉庫街。


独特の空間にたくさんのカフェが並ぶここは私がいた病室から見える場所だった。

灯台にあかりが灯り、港やカフェも点灯し始める頃、そこへ向かう人達が羨ましくて…


自分だけ時間が止まり、世界中から取り残された感覚にもうそこには戻れないんじゃないかってよく隠れて泣いてたっけ…


だけど、…

閉じたカーテンの隙間から叶夢を見つけた。

立ち止まって病室を見上げる叶夢を。

いつもしばらくそこにいて雑踏とは別の方向へ帰っていく。

叶夢だけが私を待っててくれてる気がして、どんなに救われたか…



そこまでしてくれる叶夢に恋愛感情があるんじゃ?と考えたこともあったけど、私が退院してすぐ告白されたからって綺麗な子と付き合い出したんだよね。


だから私達は『友達以上恋人未満』の関係…

きっとこれからもそれは変わらない。




「千世が俺と行きたい場所ってここ?」


拓海の声に過去から引き戻されると笑顔を向けて

「うん!」と中へ入った。

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