第45話

「─… 今度、千世の地元行かせて、

生まれ育った場所、見てみたい。」



混み合ってきた夕方の電車内、

ドアの端に寄せられ、人混みから守るように囲われた腕の中で突然言われた。


さっきまで普通に「紅葉キレイだったな」とか

話してたのに・・・


「えっ⁈ あ、うん?」


「いつ?」


…いつ、ってそんなすぐ⁈


「えっと、じゃあ冬休み帰るからその時は?」


「りょーかい、楽しみだな?」





そう言って子どもみたいな笑顔を私に向けたあの日からあっという間に休みに入り、今日になって朝からソワソワする。


私の叔父が経営している喫茶店で朝はバイトさせてもらって、昼過ぎにここへ来ることになってて。


「朝から落ち着かないねぇ、千世は。

そんなに彼氏に会えるのが待ち遠しいかい?」


「叔父さん!!」


揶揄う叔父の言葉にカッと耳まで熱くなった時、

ドアが開いて冷たい風が頬を掠めた。



「─…叶夢、」

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