第40話

叶夢は昔から大人ウケのいい子で、

それはウチの親も例外ではなく私が家へ帰ったら既にいたりもする。

この前の春休みもそうだった…


同じ病院で生まれ、二時間後には叶夢の横で泣いていて、その日からずっと一緒に育ってきたようなものだ。


だから私にとって叶夢は家族も同然、…



「なんで…」


正門のところにいる叶夢を見つけ、私に気づくと

顔を上げてジッとこっちを見る。

こうゆう時、叶夢と私の間には切っても切れない何かを感じてしまう。


いつもいて欲しくない場所に平気でいるのも叶夢が私の事を恋愛として気に止めてないからで…



「今から駅に行こうと思ってたのに。」


「ああ、悪い、予定が変わった。

教授の都合で一本早い新幹線に乗るからタクシーですぐ向かう。」



手渡された紙袋には多分、私の好きなお菓子や

レトルト製品が入ってるはず…


「もういいのに…」


「千世、夏休み何してた?叔母さんが心配するから冬はちゃんと帰れ。」


「ん、わかってる。」


「最近、体調は?夜は冷えてくるしあんまり薄着はするな。」


「わかってるっ」


少し語気が強かったのか、ため息を吐いて私を見下ろすと綺麗な指が少しだけ頬に触れて。


だけど何かに気づいたように急に顔を上げ、構内の方へ視線を移すと真っ直ぐ一点を見続けた。



「なに?どうかした?」


「…いや、じゃーもう行くわ、またな。」


「うん、またね、…叶夢!ありがとう、、」



止めてあったタクシーへ向かう背中にお礼を言うと振り返り、気怠げな表情に笑顔を見せた。

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