第35話

光で自分の輪郭がふちどられてるみたい、



月は、誰にも邪魔されることはない。

寡黙にそこにあり続け、いつも全ての人に平等でいて正しい…


そんな想いが頭を掠めた。





「─…ずっと見てられるなぁ、」



とは言えさすがに長すぎた、、、


のぼせる頭で部屋へ戻るとバルコニーに出てる

拓海を目にして。

私に気づき振り返るその指には普段、見慣れない煙草があって一口吸うと灰皿に押し付け入ってきた。



「戻ってたのか。」


「うん、……拓海、吸うんだ?」


「ここに来た時だけな。」


ここでだけ?


「どうし─……」



言葉を遮るように手首が掴まれ、引き寄せられるとそのまま唇が塞がり舌が絡まる。

口内をねぶるような激しい口づけに体の力が抜けると私を抱えてベットに横になった。



「で、どうだった?」


耳元で囁かれる声に高鳴ったままの鼓動を何とか鎮めると平静を装う。



「…、っ、月って眺める時の状況で見え方が変わると思ってて、今は何となく生かされてるような気がした、ちょっと大袈裟かな…」




腰にまわされた手に力が入り、きつく抱きしめられると微かに震えた息を吐き…


「いや、俺もそう思うよ…」


「拓海?」



不安定で縋り付くような声に顔を上げると、私の額にキスして瞼を閉ざした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る