第32話

「千世、飯もう食えるって。」


「うん、お腹すいたよねっ、、」


「じゃあ行くか。」



歩いててさりげなく繋がれる手や合わせてくれる歩幅、目を見て話してくれるところ、

拓海の仕草全てに惹かれていく。


今まで知らなかったこの感情をずっとずっと大切にしたい…


でも、拓海からの『好き』はまだ一度も聞いてないんだよね…、

って私も言えてないけど…




ライトアップされた庭が見渡せる席で出される

料理はどれも素敵で。


「ん〰︎!!美味しい!!

……拓海、あのね、す、す…」


「す?」


「す、…きやき美味しい。」


「だな、やっぱ良い肉は美味いよな。」


…ち、違う




結構な量があっても食はどんどん進み、最後の

デザートはフランボワーズのムース。

見た目も可愛くてほんと最高!!


その甘酸っぱさに、つい両手で頬を包み込むと

拓海も私の真似をして笑った。


「可愛い、」


予想外の言葉に耳まで熱い…



「あの、す、す… 酸っぱいのも好きかも。」


「ならコレもやるわ。」


私の前に置かれる拓海のムース…


違うのに〰︎、

ちゃんと伝えたいのに言えない…



「俺、もう一本ビールもらってくるわ。」


忙しそうなホールスタッフさんに気を遣い、自ら

取りに席を離れると、入れ違いで拓海の叔母さんが温かいお茶を出してくれた。

クスクス笑いながら…



「拓海が女の子連れてくるなんて初めてなのよ?

一時期、荒れちゃって手がつけられなかったけど、あの頃とは大違いね。」



…荒れて?拓海が?

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