第30話

…なに、

このタイムスリップしたような佇まいは…



和モダン造りの外観から中へ一歩足を踏み入れると現実世界から切り離されたような、非日常を

感じる。


も、もしかして、拓海ってお金持ちの子⁈



「千世〜、こっち。」


挨拶を済ませ、追いかけて入った部屋からは川がキラキラと光っているのが見えて。


「すごいっ、清流!!」


「だろ、後で降りような。

ここ風呂もすげぇから。」



窓際で食いつくように外を眺める私の背中に拓海の体温を感じ、すぐそばにある腕や手に否応なしに意識が移る…



「なに?緊張してんの?」


「してないよ…」


「ふーん、俺はこのまま部屋で千世を可愛がっててもいいけど?」



…可愛がる⁈


余計に固まる身体と上手く返せない私を観察するように見ると笑いそうになるのを堪えきれなかったのか、口角に笑みを浮かべた。

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