第19話

逃げ帰ったものの明日になれば絶対に会わないといけない。


「はぁ、どうしよ。

でもあの人にとってはただのキスなんだろうなぁ。」


  


眠れないまま世が明け、ぎりぎりで教室へ入ると

先に来ていた拓海がすでに準備に取り掛かかってくれていて。


「ごめん、遅くなって…」


私の方へ顔を上げ「いや、いいよ。」とだけ答えると教授の指示を受けながらプレゼンを終えた。


質疑応答の時間も私が詰まると代わりに答え、

いつもと変わらない拓海に余計、自分がダメに思えてくる。



「千世、少し時間ある?」


目線は片付ける手元へ向けたまま「何かいろいろごめん…」と謝る私の額に触れた手が強引に顔を持ち上げ、拓海と目が合った。


「何で千世が謝る?昨日のことだけど、」


「それもういいから!気にしてない!」


拓海の声を遮り、それだけ伝えると教室を出た。



もう接する必要もないだろうし、このままなかったことにすればいい。

それが一番、心が乱されないで済む。

好きになっても仕方ないから…

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