第6話
「おはよ…」
コーヒーの良い香りに目を覚まし、昨夜の気怠さが残る身体でキッチンへ向かうと朝ごはんを用意する叶夢に声をかけた。
「おはよ、千世。
もうすぐ出来るから先、顔洗ってきな。」
「ん… いつも優しいね、ありがとう。」
包丁を持つ手を止め、私を見て「千世にだけな」と言う言葉はお世辞でも何でもなくて。
叶夢は本当にそうなのだ、
他の人には冷たい。それがどんなに綺麗で魅力的な女の子でも…
初めてそれを知ったのは中学生の時だった。
その頃にはもう私は叶夢を親友だと思っていて、
心を許し彼の周りをウロチョロしていた。
バスケ部だった叶夢に彼女が出来たことも知らず。
「橋本くんの彼女は私なのに…」
「白川さん、違う中学行けば良かったのにね。」
放課後、教室でそう話す女の子達の会話を聞いて叶夢と一緒に帰る約束を反故にした。
それから彼を避け続けていたけど朝、玄関を出たら門の前にいて。
「千世、もう別れたから気にしなくていいよ。」
「なんで⁈ 私のせいなんじゃ、」
「違う、面倒だから他のやつ紹介した。」
「そ、そんなことしたら傷つくよ!」
「大丈夫だろ、イケメンだって喜んでたし。
今まで通り千世と友達でいられないなら女なんかいらない、だから千世も作んな。」
「私は、モテないし大丈夫だよ…」
そう答えると笑ってた。
叶夢はいつも私の傍にいて、
登下校も、勉強も、遊びも…
部屋で二人でいてもそんな素ぶりはずっとなかったのに、いつから私を異性として見ていたのだろう。
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