第35話

「この女がサフィロス王国の後継者ですって?こんな女、私は見た事ありませんわ。」苦笑いするジュビアにミカエルは続ける。「そんな事は無いはずですよ?だって貴方がこの国に来た時には既に彼女は国王と前王妃との間に生まれて、この国に居たのですから。確かに貴方が追い出してから約20年経ちますから、多少見た目は変わったかもしれないですけど。」ミカエルの話にジュビアは一瞬言葉を失うが、それでも開き直りながら話を続ける。「人聞きの悪い事を言わないで下さい。…それに、この女が国王の娘だという証拠があるのですか?」「証拠ならありますよ。ちゃんと国王から細胞を採取して第3機関に特別に鑑定して貰いましたから。これがその証拠です。」ミカエルは『ジュビアにフレディとレイラは親子にある』と書かれた書類を見せる。そして「あっ、ちなみに貴方が殺すよう依頼した国王も生きてますから。」と付け加えた。

「何の事かしら?」動揺しながらもまだ開き直るジュビアを見ながら、ミカエルは大きく手を2回叩いた。すると舞台場の扉が開かれ、屈強な男性2人に連れられたメリッサが姿を現した。「この女性が誰か分かりますよね?」「・・・」明らかに動揺して何も言えなくなるジュビア。それでもミカエルは「この女性…、メリッサ・コーディンは貴方がドリスの前に産んだもう1人の娘です!」と言い放った。更にミカエルは話を続けた。

27年前。スラム街で暮らしていたジュビアは自分の体を売って生活していた。ある日、スラム街に来た1人の紳士にいつものように近付き己の体を売った。だが、その事でジュビアは妊娠しメリッサを産む。安定しない生活で子育て出来るか迷っていると、あの紳士が再びやって来て「私の妻は子供が出来ない。もし君に育てる自信が無いのなら、その子を私達夫婦の子供としてくれないか?」と頼まれた。ジュビアは一瞬戸惑ったが、結局僅かな金と引き換えに子供を渡してしまう。それから20年経った7年前。城にメイドが欲しいと思ったジュビアの前にメリッサが現れる。見た瞬間、自分の娘だと気付いたジュビアは真実を話しメリッサを雇う。そしてメリッサに手伝わせじっくりと今回の計画を立てた。

「…以上が今回の出来事の背景です。何か間違っていますか?」ミカエルの言葉にジュビアは首を横に振り崩れ落ちる。それは長い時間を費やした計画が崩れた事を意味していた―。

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