第34話

讃美歌の流れる会場に入ると、マイクとウィリアムや隣国の関係者を含めた複数の招待客が集まっていた。招待客が見つめる中、ミカエル達は即席で作ったバージンロードを歩く。緊張度が高ぶっている新婦の体は僅かに震えていた。そんな新婦を支えるかのようにミカエルは寄り添い歩く。そして先頭で待つ神父の所に辿り着いた。

 神父は2人を見つめながら問う。「貴方は健やかなる時も病める時もこの者を妻とし、生涯愛する事を誓いますか?」「誓います。」「貴方は健やかなる時も病める時もこの者を夫とし、生涯愛する事を誓いますか?」「…誓います。」2人の言葉を聞いた神父は頷くと指輪を用意し2人の前に差し出す。シンプルなデザインだが美しい銀のエンゲージリングだ。2人は指輪を受け取ると互いの薬指にはめていく。周りの招待客は静かにその様子を見守っていた。

 指輪がはめられたのを確認すると神父は「それでは誓いのキスを。」と言う。2人は頷くと互いの顔を向い合せる。そしてミカエルは新婦に被せられたベールをゆっくりとめくっていった。

 その時、「ちょっと、お待ちなさい!」と席の方から声が聞こえた。声の主はジュビア。ジュビアは鼻息を荒くしながら近付き新婦の顔を覗き込む。「…この娘は本物の新婦じゃないわ!」ジュビアが見つめる先には娘のドリスではなく、別の若い娘―レイラが映っていた。「貴方は一体誰なの?何で新婦が娘じゃないのよ!?」大声で叫ぶジュビア。だが他の招待客は皆平然としながらジュビアを見つめていた。その様子にジュビアは徐々に戸惑い始める。

 するとミカエルはジュビアに近付き「大声出しても無駄ですよ。皆さんはもう真実を知ってますから。」と冷静に言う。ジュビアはミカエルを見つめながら「本当の事って何よ?意味が解らないわ。」と開き直り笑みを浮かべる。そんな様子のジュビアに対しミカエルはいたって冷静。そして「はい。このサフィロス王国の後継者は貴方の娘・ドリスではなく、ここに居るレイラだという真実です。」と力強く言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る