(第12話)

第33話

結婚式当日の朝。既に城に戻っていたミカエルは、式用の衣装を身にまとう。この日の為に新たに黒を基調とした衣装を用意した。袖を通し髪を整えているとジュビアが部屋に入った。「いよいよね。これでドリスもサフィロス王国も安心だわ!」娘が結婚すると思っているジュビアは朝からご機嫌だ。そんなジュビアにミカエルは笑顔で答える。するとデヴィットが部屋に入り「そろそろ会場に行きましょう。」と言いジュビアを部屋から連れ出してくれた。

 ジュビアが部屋を出た後、次に父・トムズがやって来た。「お前も結婚するのだな。」呟くトムズに「貴方がきっかけを作ったのでしょう?」と答える。トムズは笑みを浮かべると「とりあえず作戦とやらを間違えないようにな。」と言う。前もってトムズには電話で今日の全てを伝えていて作戦も理解してくれた。「…ありがとう。父さん。」ミカエルが呟くとトムズは笑顔で部屋から出て行った。

 トムズが出て行った後、マイク達が部屋にやって来た。マイク達に「そちらの準備は大丈夫か?」と尋ねると「全て整っております。」と答える。ミカエルは一つ息を漏らすと「あと少しだ。すまないが頼む。」と言う。そしてミカエルは「新婦の様子を見てくる。」と言い部屋を出て行った。

 ドリスの部屋に入るとドリスは笑顔で迎えてくれた。「ほほ準備は完了しましたわ。」そう言うドリスだったが、不思議な事に花嫁衣装を着ておらず、本来の花嫁衣裳は別の者が着ていた。ミカエルは花嫁衣装を着た者に近付くと「綺麗だよ。」と言って頬に口付けをする。そして花嫁衣装を着た者の手を取ると式の会場前まで歩いて行った。

 結婚式を挙げるのは城の一番奥の舞台場と決めていた。ここだと沢山の客が入り便利だからだ。扉の向こうには既に招待客が集まっており、複数の人の気配がする。「…本当に無事に行えるかしら?」新婦はまだ少し不安を残しているようだ。そんな新婦の手をミカエルは優しく握る。そして「…大丈夫だ。俺が傍に居るから。」と言うと、招待客が待つ会場に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る