(第11話)

第30話

Mと名乗る者からの手紙を受け取ったミカエルは走り続けた。そして何とか制限時間までに昨日の空き家まで辿り着く事が出来た。既に火は消されたが煤で建物は汚れ不気味な雰囲気を漂わせている。ミカエルは静かに建物内に入って行く。すると「来たわね。」と女の声が聞こえた。

声のする方を見ると、座らされた状態で手足を縛られ口元を布で塞がれたレイラと、その傍に背の高い若い女の姿が見える。「お前は…。」髪が下ろされ雰囲気が変わっていたがミカエルには見覚えがあった。「お前は…、サフィロス城のメイドじゃないか!?」「そうよ。私はサフィロス城…いえ、あの方に仕えているメリッサ・コーディンよ。」驚くミカエルにメリッサは不敵な笑みを浮かべる。そして、表情を変えずミカエルに近付く。「驚いたかしら?若い女がこんな事をするなんて。」目の前に来たメリッサをよく見ると、片耳のピアスが外れている事が解る。「監禁していた国王を殺そうとしたのもお前だったのか…。」「勿論よ。国王を捜索していたのは気付いていたから先手を打とうとしたの。でも貴方が連れてきた探偵達のせいで失敗しちゃったわ。だから先に次期女王候補を始末しようと思ってね。」

笑顔で話しながらメリッサは拳銃を取り出しミカエルに渡す。「…もう時間がないからゲームで決着をつけましょう。その拳銃には弾が一発入っているわ。私の拳銃にもね。合図の後、私は次期女王を撃とうとするから…、貴方は何をすれば良いか分かるわよね?」メリッサはそう言うとレイラの近くへと戻る。そして懐からもう一丁拳銃を取り出しレイラに向ける。するとレイラの顔は引きつり涙を浮かべる。「…安心しなさい。すぐに前王妃の元に連れて行ってあげる。」メリッサはレイラに言うと、ミカエルの方を見て「準備はいいかしら?」と確認する。ミカエルは頷きメリッサに向け拳銃を構えた。そして「…3、2、1!」と合図をした。

大きな音と共に弾は発射された。ミカエルの弾がメリッサの太ももに当たり、メリッサの体は後ろに倒れそのまま気絶。そしてメリッサの弾はレイラの背後を通り抜け壁に当たった。どうやら勝負がついたようだ。ミカエルはレイラに駆け寄り口元の布を外す。「ありがとう。ミカエル。」レイラは涙を浮かべながらお礼を言う。そんなレイラをミカエルは抱きしめ「愛する君が無事で良かった。」と耳元で囁いた。

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