(第10話)

第28話

ミカエルが城に戻るとドリスとジュビアは既に外出していた。ミカエルは部屋に戻りソファーに腰かける。元々、人が少ない城だったが何だかいつも以上に静かに感じた。

 とその時、部屋の扉を叩く音が聞こえ、マイクが部屋に入って来た。「今、よろしいでしょうか?」「あぁ、良いよ。座ってくれ。」ミカエルが答えるとマイクは向い合せのソファーに腰かけた。

「病院の付添いご苦労様。助かったよ。」「いえ…。こちらもすぐに国王の場所が特定できなくて申し訳ございません。」そんな会話をしていると、マイクが何かを思い出したかのように言い始めた。「実は病院から城へ戻る途中、昨日の出火場所に行ってみたんです。何か手がかりがないかと思いまして。すると、こんな物が落ちていました。」マイクはそう言うと折り畳まれたハンカチを取り出しミカエルの目の前に広げて見せる。それは真珠で作られた小さなピアスだった。「これは、どう見ても女物だよな?」「はい。恐らく全ての証拠を消そうと火を放つ準備をしていた時に落ちたのだと思います。ですが暗闇で気付かず、気付いた時には既に騒ぎが起きていたので回収出来なかったのだと思います。」マイクの推理を聞きながらミカエルは頷く。そして「持ち主までは分からないよな?」と問いかけた。「そうですね…。別の機関に調べてもらうしか…。時間がどれほど掛かるかも分かりませんし。」「そうか…。じゃあ、とりあえず俺が持っていよう。」ミカエルはマイクから真珠のピアスを受け取ると、自分のハンカチに包み直しポケットに入れる。そして体を休める為に部屋から出て行くマイクを静かに見送るのだった。

マイクが出て行き部屋に再び沈黙とした時が流れる。次々と起きる出来事に疲れが溜まっていたミカエルは、ベッドの上に体を横たえた。そして先程マイクから受け取ったピアスを取り出し見つめる。シンプルなデザインのピアスは光を受けて輝きを放っている。「このピアスが…、犯人の証拠か。」そんな事を呟きながら改めてピアスを見つめる。…何となくこのピアスに見覚えがある気がした。(一体、何処で見たんだったかな…?)ピアスをポケットに戻し考え始める。だが考えている内に瞼が重くなるのだった。

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