第26話

その日の昼近く。手元に置いてあった電話が鳴りミカエルは目を覚ます。電話の相手を確認すると国王に付いて行ったマイクだった。「どうした?マイク。」まだ少し眠気があったが平然さを装い電話に出た。「すみません。まだ眠かったですよね?」電話口から申し訳なさそうな声が聞こえた。「いや…。気にしないでくれ。…それより容体はどうなんだ?」ミカエルは話題を切り替え尋ねた。「はい。国王フレディは既に諸検査が済みました。火事が原因の健康への異常はないそうです。ただ、長い間監禁されていた為、極度の栄養失調で回復するかは難しいそうです。」「やはりそうか…。分かった。ウィリアムと交代させよう。戻って来てくれ。」「了解しました。」ミカエルは電話を切り、再びベッドに横たわる。(とりあえず国王は無事だったが…。この調子では作戦どころではないな…。)ミカエルはタメ息をつき天井を見つめる。そして何かを決意すると部屋を出て外出しようとする。

その時、「どうかしたのですか?」と背後からドリスの声が聞こえた。「外出するのですか?私と母も今から出掛けるのですけど…。ミカエル様は一緒に行かないのですか?」「悪いが今日は別の用事があるんだ。2人で行ってくれ。」そう言いながら城から出ようとするミカエル。そのミカエルの腕をドリスは掴んだ。「また森ですか?ミカエル様はどうして森に行くのですか?」更にドリスは話を続ける。「深夜の出来事もそうです。ミカエル様は『空き家が燃えただけ』って仰ってましたけど、背後に何か隠してましたよね?」そしてドリスは「一体、今何が起きてるんですか?説明して下さい!」と力強く尋ねた。返答に困りミカエルが黙っていると「それ以上の詮索は許しません。」と声が聞こえた。気付くとウィリアムが立っていた。ウィリアムは2人に近付きドリスの腕を掴むとミカエルの腕から引き離し「ここは気にせずに行って下さい。」と言う。「…すまない。」ミカエルはドリスの方を見ず城から出て行った。

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