第23話

真顔でミカエルを見つめるレイラ。レイラの初めて見る真剣な表情に「…嫌なのかい?」とミカエルは聞き返す。再び沈黙とした空気が流れる。レイラは俯いて「嫌なわけじゃないけど…。」と小さい声で答える。そして、そのまま言葉を続けた。「確かに私も本当は城に帰らなければならないと思っているわ。どんな出来事があっても、私の居場所はあの城だから。女王の気持ちはずっと持ってるつもりだしね。だけど…。」レイラはミカエルを見つめ言った。「だけど貴方を私達の事情に巻き込ませたくなかったわ。…私にとって貴方は大切な人だから。」

 レイラは自分の想いを伝えると立ち上がり何処かへ行こうとする。「レイラ!」ミカエルはレイラの腕を掴むと自分の方へ向けさせる。そしてレイラの唇に自分の唇を重ねた。しばらく口付けするとミカエルはレイラを抱きしめ言った。「レイラ…。そんな風に俺の事を想ってくれて嬉しいよ。俺もレイラの事が大切なんだ。だから君の為に俺は動くと決めた。」ミカエルはレイラの髪を撫でながら続ける。「だから無事に国王が戻って来たら…。俺と結婚してくれないか?」優しく耳元で将来を誓った。ミカエルの言葉にレイラの方は更に赤くなり、しばらくの間2人で抱き合っていた。

 「…本当なの?だってミカエルはドリスと結婚しなければ駄目なんじゃないの?」頬を赤くしながら尋ねるレイラ。そんなレイラの頭を撫でながらミカエルは優しく言う。「父はあくまで『サフィロス王国の王女と結婚しろ』と言っただけで、『ドリスと結婚しろ』とは言ってないんだ。ドリスの名前もレイラから初めて聞いたんだ。それに本当の王女がレイラなら君と結婚するのが正しいと思うよ。」「でも…、ドリスと結婚したかったんじゃないの?」ミカエルの言葉を聞きながらもまだ戸惑っている様子のレイラ。そんなレイラを優しく見つめながらミカエルは続ける。「…正直言うと父の話があっても僕はレイラと結婚したかったんだ。この森で初めて会った時からずっと好きだった。…それとも僕と一緒に居るのは嫌か?」ミカエルに急に尋ねられレイラは首を横に振る。そして頬を更に赤くしながら「私も初めて会った時からミカエルの事が好き。だから…、傍に居たいです。」と自分の想いを伝えた。想いを確認し合った2人は再び口付けを交わす。そんな2人を祝福するかのように朝日で森も輝いていた―。

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