(第8話)

第22話

早朝。まだ霧が出ている中をミカエルは城から出て行った。レイラに会う為だ。少し道を覚えた森の中をミカエルは歩き続ける。そして無事に例の大きな切り株がある場所に辿り着いた。

だが、いつも居る筈のレイラの姿が何処にもない。(おかしい…。前みたいに小鳥に餌をあげてると思ったんだが。)静まりかえる森に不安がよぎったミカエルは更に森の中を進む。すると目の前に1軒の小屋が現れた。

「こんな所に小屋?もしかしてレイラが住んでいるのか?」恐る恐る扉に手を触れるミカエル。どうやら鍵は開いている。高まる鼓動を抑え、ゆっくりと扉を開けた。

扉を開けると小さな流し台と食料を入れる為の貯蔵庫がある。おもむろに蛇口をひねると水が出る。更に貯蔵庫を開けると保存のきく食べ物がいくつか入っていた。「ここで何者かが住んでいる事は確かだな。」ミカエルが考えていると小さい台所の奥に扉がある事に気が付いた。再び扉に触れ静かに開いていく。

開けた扉の先は小さな机とベッドが並べて置かれているだけの部屋。窓がベッドと机の傍にあるが、まだ朝日が昇り切っていない為か室内は薄暗い。ミカエルが部屋の中に入るとベッドの中に誰かが横たわっているのが見えた。薄暗い室内のせいでネズミ色に見える髪。だが、見覚えのあるその顔の女性はずっと目を閉じたままだ。「レイラ…?」ミカエルが声をかけるがレイラは目を開けない。「レイラ?レイラ!」ミカエルはレイラの頬を軽く叩きながら名前を呼び続ける。

すると呼びかけにようやく気付いたレイラが目を開けた。「あれ…?ミカエル…?」まだ少し寝ぼけているレイラはミカエルを見つめる。「良かった…。ようやく目を覚ましてくれた…。」安堵するミカエルの顔を見たレイラは、ミカエルが自分の事を心配していた事に気付く。そしてミカエルの手を優しく握ると「心配させてゴメンなさい。」と言った。

小屋から出たミカエルとレイラはいつもの切り株に腰かけた。まだ眠そうなレイラに「…眠れなかったのかい?」とミカエルは尋ねる。レイラは頷き遠くを見つめながら「昨日、デヴィットに言われた事を考えてて…。」と呟く。そして、しばらく沈黙した後「…本当にミカエルは父を…国王を見つけて、私を城に戻すつもりなの?」と尋ねた。

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