第15話

デヴィットがレイラと別れたその頃。ジュビアとドリスの買い物に付き合うミカエルは店の外で休憩していた。財政難なのにジュビアの買い物は派手で、どんな値段の品でも見境なく購入していく。そればかりかミカエルが選んだ物は「少し地味だわ。」と言って却下されていた。(付いて来た意味は無かったかもな…。)呆れたミカエルは店の外に出た。そして外壁に体をもたれさせると腕を組む。目の前の大通りには恋人や親子達が仲良く歩いている。その姿を見ながらミカエルは再びレイラの事を考える。(いつか彼女と歩いて買い物に来られるだろうか。)

ミカエルがしばらく考え込んでいると店の扉が開き中からドリスが出てきた。「ごめんなさい。ミカエル。すっかり待たせてしまって。疲れてしまったでしょう?」「いや、大丈夫だよ。」申し訳なさそうに話すドリスにミカエルは笑顔を作り話す。そんなミカエルの表情を見たドリスは「…少しお話しても良いかしら?」と言いミカエルの横に並んだ。

 「私ね、本当はそこまでサフィロス王国の女王になりたいとは思ってないの。」「えっ?」突然のドリスの告白に驚いたミカエルは思わず声を出してしまう。そして咳払いすると「でも君も結婚して女王になりたかったのでは?」とドリスを見つめて尋ねた。ドリスは一瞬微笑むがすぐに真顔になり話し始める。「女王になりたかったのは母の方よ。スラム街出身だった母はお金持ちになるのが夢だったから。でも結局、同じスラム街の人との間に私が出来てしまったの。おまけにその人は薬物で死んでしまって…。以来、様々な仕事をしながら私を育てたわ。」ドリスは一呼吸すると話しを続ける。「20年前にサフィロス王国の前王妃が亡くなったと聞いた母は、自分の美貌を利用して国王に近付いた。そして結婚すると財産を使いやすいように手続きを済ませ国王をある場所に監禁した。そればかりか、自分の娘を本来の女王も追い出してしまったのよ。」

 全てを話し終わったドリスはミカエルを見つめ「ミカエル。貴方を利用して母の陰謀に巻き込ませてごめんなさい。」と改めて謝罪した。ドリスが少し涙を浮かべた表情を見たミカエルはハンカチを取り出しドリスに渡す。ドリスがハンカチを使い涙を拭うのをミカエルは見つめる。そしてドリスの頭に手を置くと「話してくれてありがとう。」と優しく言うのだった―。

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