(第5話)

第14話

ミカエル達が出て行って少し時間が経った頃。デヴィットはメイドに明日のダンスパーティーで足りない分の食料調達を命じた。命じられたメイドは荷支度を始めると城を後にする。そしてデヴィットも、メイドが外出したのを確認すると手に僅かな食料を持ち静かに城を出て行った。

 城を出たデヴィットは螺旋状の坂を下り森の方へと歩いて行く。草木をかき分けて進むとデヴィットの目の前にあの切り株が現れた。デヴィットが更に奥に進むと小さな小屋が建っていた。デヴィットは小屋の扉を叩き「デヴィットです。」と声をかける。

すると小屋の扉が静かに開き中からレイラが現れた。「デヴィット!今日は早いのね?」「はい。ちょうど皆が外出されましたので…。」笑顔で迎えるレイラにデヴィットも笑顔で答え、食料の入ったバスケットを渡す。「いつもありがとう。デヴィット。」レイラは喜んでバスケットを受け取ると中身を抜いてバスケットを返す。デヴィットはバスケットを受け取ると「いえ…。私もこれぐらいしか出来ないですし。何かと不便にさせてしまい申し訳ありません。」と謝罪の気持ちを表す。「貴方のせいじゃないわ。ジュビアの事を見抜けれなかった父の方に責任があるし。それに、あの時デヴィットが現れなかったら、私の命も危なかった訳だしね。」笑顔のレイラにデヴィットの目に涙が浮かぶ。だが素早く拭うといつもの表情に戻った。

「そういえば…、王女の結婚相手にミカエルという方が選ばれたのね。道に迷っていたとは言え私の所にも来たわ。なかなか素敵な人ね。」話題を変えるかのようにレイラは明るく話す。「やはりそうでしたか。彼が森に行ったと話していたので、そうかもとは思っていましたが。」レイラの言葉を聞いたデヴィットは「…羨ましいですか?」と問いかける。レイラは少し考え「少しだけね。…でも仕方ないわ。」と呟いた。そんな風に話していた2人だったが、「いつまでも城を空ける訳にはいかないので…。」と言いデヴィットは帰り支度を始める。レイラはその様子を見守ると、帰る後ろ姿に手を振って見送るのだった。

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