第13話

「森って…。あの森ですか?あの森には『怪しい者が居る』って噂ですよ。だから森を潰そうって考えてるくらいですし…。」「えっ!?」ミカエルは驚き声を出す。だが咳払いして冷静さを装った。そんなミカエルの様子を見ながらもドリスは「さぁ、お城に帰りましょう。」と何食わぬ顔で言いミカエル手を差し出す。

『あの森には本当の王女が居るんだ!』ミカエルは口にしたかったが、その言葉を飲み込む。国王が行方不明の状況では、例えレイラを連れて帰っても王女と認められないかもしれない。そう考えたミカエルは、とりあえずドリスと共に城に帰り作戦を練ろうと思ったのだった。

サフィロス城に戻ると城の入り口でデヴィットが待っていた。「お帰りなさいませ。一体、どちらまで行かれてたのですか?」デヴィットの問いにミカエルは「すまない。森に行ってたんだ。」と答える。一瞬デヴィットの表情が変わった気がした。だが、すぐに「左様でございますか。迷われなくて何よりです。」といつもの口調になる。(デヴィットは何か知っているのか?)問いかけたかったミカエルだが、一足先に城に戻ったドリスに呼ばれていた為、あえて聞かずに城の中に入って行った。そしてデヴィットも、ミカエルが城に入ったのを確認すると静かに扉を閉めた。

「お帰りなさい。ミカエル様。」城に入るとジュビアが歩いて来た。薔薇の飾りをあしらった白い衣装をまとっている。「ドリスから聞きましたわ。あの危険な森に行ってたそうですね。無事に帰って来れて良かったわ。」ジュビアは笑顔でミカエルに話す。レイラから話を聞いたミカエルはジュビアの態度に嫌悪感を抱く。だが悟られないように「心配させてしまいすみません。」と表情を変えなかった。そんなミカエルにジュビアは笑顔のままだった。そして何かを思いついたかのように「そうですわ。明日、内輪ですけどダンスパーティーを行うんです。ですので、ドリスの衣装を買いに街へ行きませんか?」と誘う。(ここで断ったら不振がられるか…。)ミカエルはタメ息をつくと、買い物に付いて行く事を告げた。ジュビアとドリスは喜び早速準備をする。ミカエルもスーツに袖を通す。そしてジュビアはデヴィットとメイドに「じゃあ、行って来ますから留守を頼みますわよ。」と言い、ミカエルとドリスを連れて城を後にする。段々と小さくなる3人の後姿をデヴィットはいつまでも見送っていた―。

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