第12話

2人の間に沈黙とした空気が流れる。「教えてくれ!君は居場所を追われた娘で…、本当の王女なのか?」再びミカエルは強く問いかけるがレイラは黙ったまま。そればかりか話題を変えるように「…明るくなってきたわね。そろそろお城に帰った方が良いんじゃない?」と促した。

「今はそれどころじゃないだろう!?」「でも…、城の皆に黙って来たのでしょう?早く戻らないとここまで探しに来るかもしれないわよ?そしたら、せっかくの森が台無しになっちゃうし…。」熱く話すミカエルに対しレイラは冷静に言い返す。そんなレイラの様子を見たミカエルは徐々に落ち着きを取り戻す。そして「…分かった。もう帰るよ。」と言いレイラに背を向け、城に向かって歩き始める。レイラは立ち去るミカエルを見つめながら「ゴメンね、ミカエル。」と呟いた。

日を浴びながらミカエルは城に向かって歩き続ける。その道中もずっとレイラの事を考えていた。(レイラの話が事実だとすれば、サフィロス王国が更に衰退したのは王様が行方不明になっただけが原因じゃない。ジュビアとドリスが財産を食い潰してるから衰退していったんだ。そればかりか財産が無くなりそうだから、先祖の繋がりがあって富を持っているカーチェスト家に目をつけたんだな。)ミカエルの胸に2人に対する憤りが込み上げてくる。と同時に『おとぎ話のように上手くならないかもしれないけど…、レイラを城に戻したい!』と思うようになっていた。

そんな事を考えてる間に気が付くと森を抜けていた。目の前には城の建つ崖が見える。ミカエルは城に向かって再び歩き始める。すると螺旋状になった坂から誰かが降りて来た。「ミカエル様!」聞き覚えのあるその声はドリスだった。ドリスはミカエルを見つけると駆け寄る。ドリスの姿を見たミカエルは深呼吸して先程までの憤りを抑えた。そして「おはよう。ドリス。」と言いドリスに近付く。「『おはよう』じゃないですわ。ミカエル様ってば急に居なくなるんですもの。何処に行ってたんですか?」「何処って…。森に行ってたんだ。すごく綺麗だから。」ドリスの言葉にミカエルは優しい表情で答えた。

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