第32話

「チヒロちゃん、寒くない?荷物を持とうか?」

 クルミが尋ねた。チヒロは、

「大丈夫です。ありがとうございます」 

 と、答えた。


 チヒロはヒロミに振り向いた。ヒロミは神妙な顔をしている。叔父と打ち解けたが祖父母といとこはどうだろうか。チヒロも不安になった。


 チヒロとヒロミの前にはシズマとクルミが談笑している。シズマがチヒロの好奇心旺盛な態度を楽しそうに話している。クルミは興味深そうに聴いている。


 道行く人はまばらで道路は広く感じられる。しかし登り坂が続く。呉暮村は喜原町よりも標高が高いようだ。


 クルミとシズマは時々振り返る。レンガで舗装されてはいるが、12歳の都会育ちの少女には辛い悪路だ。だが、チヒロは無表情で歩いている。

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